弁護士費用

 

旧日弁連基準とは


弁護士費用ですが,以前は,日本弁護士連合会(通称,日弁連)によって統一されていましたが,平成16年4月に自由化されました。しかし,今も多くの弁護士がこの基準を提示しています。そのため,業界では,旧日弁連基準などと表現することがあります。

HPなどで費用を公表している弁護士であればいいですが,HPが無いなどで弁護士費用が分からない場合は,弁護士費用の相場を知るうえで,1つの指針にしていただくといいでしょう。

旧日弁連基準」はこちら。

着手金報酬金方式とタイムチャージ方式


弁護士費用には,主に着手金報酬金方式とタイムチャージ方式があります。

多くの弁護士が着手金報酬金方式を採用していますが,費用の基本的な構成として,契約時に支払う着手金(結果の成否にかかわらず発生する費用で,原則,戻ってこない費用),実費(郵送費,紙代,電気代,電話代,交通費など業務を遂行するうえで実際にかかった費用),報酬金(依頼の成果に応じて発生する費用で,契約時に,どういう状況になったら,どれだけの費用がかかるかを取り決める)の3種類があり,その他,事前協議のうえ,日当など,別途求められる場合があります。

この方式のメリットは,当初取り決めた活動内容(契約書に「委任の範囲」を定めます)が変わらない限り,基本的に,どれだけ長期化しても追加着手金は発生しませんので,予期せぬ費用請求をされることがないことです。
また,目的が達成されなかった場合は,当然報酬金は発生しません。

デメリットは,委任の範囲を細かく取り決めますので,契約時の委任の範囲では業務が進まないとなれば,委任の範囲を広げる提案をされ,それに伴う追加契約及び追加着手金を求められることです。

相談段階で事案の見通しなどを確認しておかないと,あれをするから追加,これをするから追加となりますので,他人事のように弁護士に丸投げせず,きちんと話を聞いて,理解のうえで契約するようにしましょう。

次に,あまり利用されないタイムチャージ方式ですが,費用の構成として,実費と報酬金(弁護士の活動時間に応じて費用が発生する)のみで,結果の成否にかかわらず,簡単にいうと弁護士の時給を支払う契約です。

この方式のメリットは,短時間で終結すれば費用が安く済み,仮に相手方から多額の賠償金を得たとしても,活動時間×時間給以外の費用はかからないことです。

デメリットは,長期化した場合,弁護士費用が高額になってしまう可能性があり,成果がなくとも支払わなければなりません。

いずれの方式にしても,まずは弁護士が提案する内容次第になりますし,逆提案しても,それを受け入れてもらえるとも限りませんので,そのような方式があることを知っていただければ幸いです。

一概に弁護士費用が高いとはいえない


先ほど記載のとおり,基本的に,多くの弁護士が着手金報酬金方式を採用しているのですが,弁護士に依頼をするに至った事案の場合,その大半が,揉めている又は高度な専門知識を要する事案です。そのため,短期間で終わる事案は少なく,着手金が高いなと感じても,解決までの見込み期間を考えると,自分で時間を割いて,調査,交渉,裁判などをするより,弁護士に依頼する方が結果的に安上がり(自分でやった場合に要するであろう時間をお金に換算してみてください)になる事案は多いです。

事案と比較して弁護士費用が高いなと感じるケースとしては,少し調べれば自身でも手続き可能で,要件さえ満たせば金銭を受領することができる事案(代表的なところで過払金やB型肝炎など)や,争いに発展していないが,取り扱う額が大きい事案(代表的なところでM&Aや遺産分割など)でしょうか。

また,請求額に関係なく活動内容があまり変わらない事案(代表的なところで債権回収や交通事故など)についても,同じ労力なのに,請求額や回収額が大きいというだけで,より多くの弁護士費用を支払うというのは,公平性という観点からも高いなと感じるところです。

とはいえ,簡単な手続きであっても難しい,煩わしいと感じる方もおられますし,無理矢理契約させられているわけでもないので,あくまで私の感想になります。

相談料無料は稼げる事案


法律相談料の相場は30分あたり5000円ですが,中には,相談料無料を実施しているところもあります。

その中で,一部の事案のみ無料対応している場合は,その事案が弁護士にとって稼げる事案であることが多く,簡単に言うと,稼げる事案は相談料を無料にしてでも顧客を獲得したいという思いが込められている場合があります。

稼げるとは,単に高額な弁護士費用が見込める場合に限らず,費用対効果が高い(労力に対して弁護士費用が高い)事案が対象ですので,少額事案であっても割と喜んで依頼を受けてもらえます。

稼げる事案は業務の流れが定型化している場合が多く,流れ作業のように片手間で対応されることもあるため,広告宣伝やHPのキャッチフレーズなどに惑わされず,相談する弁護士個人を見て,信頼関係が築ける人に依頼するようにしましょう。

法テラスを利用しても弁護士の仕事は変わらない


法テラスとは,日本司法支援センターの通称で,国によって設立された法的トラブルのための総合案内所です。

一定の資力以下の個人を対象に,法テラスが弁護士費用ないしは司法書士費用を立て替えて支払い,その個人は,法テラスに対して,当該立替金を無利息で長期分割返済することができる制度です(生活保護受給者は実質無料)。

弁護士費用は法テラスの基準に基づいて決定されるのですが,一般的な弁護士費用より,基本的に安く設定されています。

この法テラスですが,法律事務所勤務時に感じたのは,世間の認知度の低さ及び法テラス利用に対する偏見です。

法テラスの詳細は,公式ホームページをご確認ください。

ここでは,法テラスの利用方法やメリットなどを簡単にご説明します。

まず,法テラスには,スタッフ弁護士と呼ばれる法テラスに所属している弁護士と,他の法律事務所に所属しているが法テラスと契約している弁護士が存在します。
法テラスを利用するためには,このどちらかの弁護士である必要があります。

法律相談の場合,同じ事案であれば3回までは無料(相談料は返済不要で,相談を受ける弁護士には法テラスから相談料が支払われます)で相談することができます。

最寄りの法テラスに電話して相談予約をするか,自身が希望する法律事務所に法テラスが利用できるか確認のうえで,その事務所に相談予約を行い,相談後に法テラスの申込書を記入する必要があります。

行政や弁護士会などが開催する無料相談会もありますが,その場合は日時が限られます。法テラスを利用すれば,法テラス又は対象の法律事務所が営業をしている時間帯での相談が可能となり,弁護士にも相談料が支払われますので積極的に利用しましょう。

相談後に依頼をすることになれば,法テラスに立て替えてもらえるか否かの審査を受けるための申込みを行い,問題なければ,契約締結後に法テラスから弁護士にお金が支払われ,依頼人は法テラスに対し分割返済開始という流れになります。

ここで多くの偏見の声を聞いてきました。
その内容が,「法テラスを利用すると(弁護士費用が安いので)弁護士が頑張ってくれないのではないか」というものです。

確かに,法テラス事案を積極的に受けたくないと考えている弁護士も多いでしょうし,モチベーションが上がらないという声を聞いたこともあります。しかし,本当に法テラス事案が嫌な弁護士は,そもそも法テラスと契約していません。

法律事務所基準の弁護士費用でも,法テラス基準の弁護士費用でも,依頼を受ければ弁護士は必要な活動を行います。「法テラスじゃなかったら○万円貰えたのにな~」なんて思いはあれど,そこはプロの専門家。手を抜いて,依頼人に不利益を与えるような活動は行いません。

こんなことを言うと多くの弁護士から嫌な顔をされそうですが,制度があって,その制度を利用できる条件を満たしていて,弁護士が制度を使えるようにしているのであれば,依頼人がわざわざ高い費用を支払う必要はありません。

納税しているのですから,その税金を財源としている公共の組織である法テラスは,もっと認知されるべきであり,もっと利用されていい組織だと,私はそう思っています。

まとめ


自ら活動する時間がない,専門性の高い問題で対応が困難などの場合はともかく,とりあえず頼むという感覚で弁護士費用をかけるのは勿体ないです。

弁護士に相談して,どのような流れで,どのような手続きが必要になるのかを聞けば,弁護士に全部を頼まなくても済むケースは多分にあります。

費用がネックになり泣き寝入りをされている方は,ぜひ,自身で対応できる部分はないかなどを検討し,場合によりピンポイントで弁護士を利用するなど模索してはいかがでしょうか。
要望をきちんと伝えれば,多くの弁護士は柔軟な対応をしてくれますよ。

自身での対応,法テラス利用など,上手な弁護士の使い方を覚えるだけで選択肢は増えます。

問題解決の壁が弁護士費用である場合は,どうか諦めないでください。